こんにちは、nanapiマーケ部です。
今回は、NY発の長文メディア、「Narratively」について書いていきます。
Narrativelyとは、2012年9月に立ち上げられたメディアです。
Narrativelyは、一般人のまだ語られていない物語にスポットライトを当てたメディアであり、大手メディアが報道する速報などは扱っていません。
そのため、1日に1度、その週のテーマに沿った物語(narrative)が更新されます。それぞれの物語は、その物語にとって最適なフォームで伝えられるため、「長文」「短文」「短いドキュメンタリー」「フォトエッセイ」「オーディオ」「コミック形式」など幅広い表現形式を持ちます。
デザインも非常に美しく、TIME誌の2013年ベスト50ウェブサイトにも選ばれたNarratively。
今回は、このメディアの沿革、特徴、ビジネスモデルについて詳しく見ていきます!
Narrativelyの沿革
上にも書いたように、Narrativelyの創業は2012年9月です。クラウドファンディングサイトのKickstarterにて出資を募ったところ、無事に目標額である5万ドルを集めることができ、ローンチしました。
創業者は、 ノア・ローゼンバーグ(Noah Rosenberg)とブレンダン・スピーゲル(Brendan Spiegel)であり、2人とも以前はThe New York Times, The Wall Street Journal、GQなど数々のメディアに記事や写真を投稿してきました。
NYTなどに記事を寄稿していたフリーランス時代に、ノアは人々の些細な物語に強く興味を持つ、ということに気付いたそうです。
創業者 ノア・ローゼンバーグ(画像:Alex Lau)
立ち上げた当初は、ニューヨーク創業ということもあり、ニューヨーク在住の人々の物語だけを取り扱っていました。サイト開設時から注目されていたこともあり、わずか2か月で収益を上げ始めます。
その後、ニューヨーク以外の物語やより短い語数の記事も扱うようになり、最近ではロサンゼルスにオフィスを持ち始めました。
では、ここで現在の状況についてもすこし整理しておきます。
2014年2月時点で、オフィスはニューヨークとロサンゼルスに持ち、正規の従業員は2人。アルバイトが25人で、550人のフリーランサーがかかわっています。記事の本数は、創業当初より変わらず1日1本。テーマは毎週更新されます。
次に、このメディアの特徴について見ていきます。
Narrativelyのデザイン
Narrativelyのサイトは非常に美しいです。「Pictures of the Year International」でベストウェブサイト2014に選ばれたこともあります。
↑ まず、ホーム画面は上記のようになっています。
今週のテーマは「Cheating Death」(「運よく死を免れる」)だとわかります。そしてそのテーマに関連する記事が何本かアップされています。
興味のある記事をクリックすることで記事にジャンプします。記事画面になると画面全体に記事が映し出されるため、記事に集中することが出来ます。
↑ 記事タイトル画面。記事によっては「記事を読むのにかかるであろう時間」「記事が対象としている場所」も書かれています。
↑ 記事本文。写真とテキストが綺麗に配置されています。
また、Narrativelyのデザインは、Quartzと同じくレスポンシブデザイン(様々な種類の機器や画面サイズに単一のデザインで対応するデザイン)を採用しています。そのため、スマホからでも快適に見ることができます。
Narrativelyの編集方針
Narrativelyの基本編集方針は明快です。毎週異なるテーマにそって、1日1本の記事が投稿されます。
以下では、記事タイプについて書いていきます。記事タイプは大きく分けると5つあります。「Writing(文章)」「Video(動画)」「Photo(写真)」「Audio(音声)」「Comics journalism(コミック)」です。
WRITING
文章がメインの記事です。短いものは、4〜5分で読め、長いものなら40分ぐらいかかる記事まであります。
例えば、「TALES OF ICE CREAM DREAMS AND FRO-YO FIENDS」という記事は、アイスにまつわるいくつかの短編からなっており、記事を読むのにかかる時間は推定32分となっています。確かに、とても長い記事です。
VIDEO
時には、動画で人々の物語が語られます。
「THE VOICE FROM THE MOSQUE」という記事では、ニューヨークに住んでいる女性が道から聞こえてくる美しい歌声に魅了された物語が展開されます。歌声を文章とともに伝えるため、動画という手段が取られているのだと考えられます。
動画の物語は一般的に推定読書時間が短い傾向にあります。
PHOTO
フォトエッセイによって物語を伝えることもあります。
「TWILIGHT OF THE PUSHKAR CAMEL FAIR」では、インド、プシュカールのラクダフェアをたくさんの綺麗な写真とともに伝えています。
AUDIO
物語の主人公が、直接自分の物語を語るときオーディオが用いられます。以下の画像のように、オーディオは挿入されています。
実際に声を聴くことでテキストや動画とはまた違った物語の訴求があります。
COMICS JOURNALISM
コミック形式の記事もあります。たとえば、以下の記事をご覧ください。
«THE MYSTERIOUS SEA APE OF THE ALEUTIAN ARCHIPELAGO
こういった記事の場合、伝えられる情報量は減ってしまうかもしれませんが、長文が苦手な読者などにとっては、触れやすいメディア形式なのかもしれません。
ビジネスモデル
ここでは、Narrativelyのマネタイズ手段について書いていきます。大きく分けると3つの手段を持っているようです。
1.スポンサー広告
Narrativelyの記事の中にはいくつかスポンサーコンテンツが紛れています。
最近でいえば、The Financial Timesが出した「How to fly a Gripen fighter jet with the FT」という記事への導線をNarrativelyの中においています。
上記の右上に見える記事(赤枠で囲ったもの)は、一見Narrativelyの記事に見えるのですが、よく見ると記事画像内に「Sponsored」の文字が入っており、また、クリックするとThe Financial Timesのサイトに飛びます。
2.クリエイティブグループ
Narrativelyが持つクリエイティブスキルを売り出しているようです(Story Firstのp.13参照)。
HPによると、過去のクライアントにはGEやChevyがいるとのことで、良質なコンテンツを生み出す手伝いをしているとのことです。
これからの時代、どの企業も良質なコンテンツを対外的に発信することが求められるため、その需要とNarrativelyのクリエイティブグループはマッチしていると考えられます。
3.有料会員
Kickstarterでの出資額によって受けられる会員向けのサービスは出資額によって異なります。例えば、25ドル以上出資してくれたメンバーはプレミアムメンバーとして認定され、年一回のイベントなどに参加する権利があるようです。
また、会員だけでなく非会員も対象にしたイベントも頻繁に開催しており、ディナーパーティーなどが主にニューヨークで開催されているようです。
4.シンジケーション
シンジケーションとは、いろいろな意味がありますが、メディア業界ではコンテンツを共同で制作したり、コンテンツを他社に提供することです。
Narrativelyでは、時間をかけて作った良質な記事を、他のメディアに提供しているようです(収益を上げているかは不明)。Content HUBに掲載されていた創業者へのインタビューによると、Narrativelyはシンジケーションでも収益を上げようとしているようです。
Narrativelyのサイトによると、今まで記事を提供したメディアとしては、Salon, Business Insider, The Huffington Postなどがあるようです。
良質なコンテンツを作っているNarrativelyならではだといえるでしょう。
終わりに
人々の語られていない物語に特化した長文メディア、Narratively。インターネットの発達、クラウドファンディングの発達により、このような特定の領域を追求するサイトのマネタイズも可能になってきています。
昨今のバイラルメディアとはまた異なった形で情報を配信するメディアのあり方として参考になります。
参考サイト
«Narratively’s Noah Rosenberg on monetizing long-form journalism
«In-depth storytelling site Narratively adds shorter stories
«For Narratively, Kim Kardashian Is Just As Interesting As Your Neighbor
«50 Best Websites 2013
«Narratively: longform local journalism startup to launch LA branch
«Narratively and New Inquiry highlighted as journalism with revenue
«Narrative.ly Local NYC storytelling in a new web outlet for long-form journalism
«Noah Rosenberg